オープンAIで何が起きているのか 解任のアルトマン氏はマイクロソフトへ

ゾーイ・クラインマン、テクノロジー編集長

サ ・アルトマン氏(11月6日撮影)

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サ ・アルトマン氏(11月6日撮影)

生成AI(人工知能)のチャットGPTを開発した米企業オープンAIの最高経営責任者(CEO)を解任されたサ ・アルトマン氏(38)が、米マイクロソフトに入社することになった。同社が19日、明らかにした。一方、オープンAIの多くの社員は20日、アルトマン氏の復帰と取 役の総退陣を求め、受け入れられなければ同社を去るとしている。何が起きているのか。

世界を救うとも滅ぼすともいわれる未来の技術を保有する、巨額の価値がある企業の取 役会で、争いが繰り広げられた。

世界の指導者らが話を聞きたいと願う最高経営責任者(CEO)に対し、他の取 役らが敵意をむき出しにし、その地位から引きずり下ろした。

これは決して、私がネットフリックスに提案したいドラマの案ではない。実際にオープンAIでここ数日の間に、起きていたことを要約するとこうなる。

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テクノロジージャーナリスト、熱狂的ファン、投資家らは、この展開を食い入るように見てきた。た 、これが果たして本 的なスリラーなのか、それとも滑稽劇なのかは、意見が分かれるところ 。

発端は?

オープンAIの最上層部で突如として争いが起きたのは、17日のこと 。取 役会が、同社共同創業者のアルトマンCEO(当時)を解任したと発表した

取 役会はアルトマン氏について、「一貫して率直なコミュニケーション」を取らなかったと、ブログ投稿で非難。彼のリーダーシップに対して「信 を失った」とした。

同社の取 役会は6人しかいない。その中にはアルトマン氏と、同社共同創業者のグレッグ・ブロックマン氏が含まれている。ブロックマン氏は、アルトマン氏の解任後に辞任した。

共同創業者のグレッグ・ブロックマン氏

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共同創業者のグレッグ・ブロックマン氏もオープンAIを去った

つまり、アルトマン氏と同社のことをよく知る他の4人が限界点に達し、あまりに事態が深刻なため、即座に行動を起こしたわけ 。この動きはテクノロジー業界全体を驚かした。同社に投資している人たちにとっても、寝耳に水 ったとされる。

オープンAIの共同創業者でもあるイーロン・マスク氏は、「とても心配している」とX(旧ツイッター)に書いた。

そして、オープンAIの科学主任で取 役のイリヤ・サツキーヴァー氏について、「このような極端な行動は、絶対に必要 と感じない限り、彼は取らないはず 」とした。

サツキーヴァー氏自身は現在、後悔の念を明らかにしている。また、アルトマン氏とブロックマン氏の復帰を求めて取 役会に宛てられた激しい内容の手紙に、他の多くの人々と共に署名。2人の復帰が認められなければ、自分たち全員がオープンAIを去る可能性があるとしている。

原 は?

この雪 るま式に拡大した急展開は、何が原  ったのか。実のところ、ま わかっていない。しかし、いくつかの可能性が考えられる。

アルトマン氏は、AIチップの資金 出や開発など、ハードウェアのプロジェクトをいくつか検討していたとされる。これはオープンAIを大きく方向転換させるもの っとみられる。アルトマン氏は取 役会の知らないところで、何らかのコミットメントをしたの ろうか。

それとも、結局のところは、昔ながらの人間的な争いの種――つまりお金――に行き着くの ろうか。

すでに多くのメディアが じている内部メモの中で、取 役会はアルトマン氏について、「財務上の不正行為」があったわけではないと強調している。

しかし、オープンAIは非営利団体として設立された。これは、同社が金もうけを目的としないことを意味する。売り上げから運転費用を賄うのに十分な けを取り置き、余りは事業に投資する。ほとんどの慈善団体も、こうした非営利団体として活動している。

オープンAIは2019年、新たな部門を設立した。営利に関連した部門 った。同社はこれらを共存させようとした。営利部門は非営利部門が主導するとし、投資家が手にする利益には上限を課すとした。

これを誰もが歓迎したわけではなかった。マスク氏がオープンAIから離れたのは、これが主な理由 ったとされる。

ところが、オープンAIは現在、とてつもなく大きな価値をもつ企業となっている。社員らがもっている未公開の 式をすべて売却すれば、860億ドル(約12兆7000億円)になると じられている。

営利企業としての側面をもっと強化ようという、そうした野望があったの ろうか。

結末は?

アルトマン氏を歓迎すると表明した米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(11月6日撮影)

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米マイクロソフトのサティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)は、アルトマン氏を歓迎すると表明した(11月6日撮影)

オープンAIは、汎用(はんよう)人工知能(AGI)の開発を目指している。ま 存在していないもので、恐怖と畏怖の両方を呼んでいる。基本的に、人間(つまり私たち)が現在できるのと同じように、あるいはそれ以上に、多くの作業をこなせるAIツールをいつか登 させようとしている。

これが登 すれば、私たちの行動をそっくり変える可能性がある。機械が様々なことを代わりにできるようになれば、仕事、お金、教育などすべてのやり方が一から変わる。信じられないほどパワフルな道具 。現存はしないが、少なくともそうなる ろうと言われている。

オープンAIは私たちが思っている以上に、その実現に近づいていてるの ろうか。そしてアルトマン氏は、そのことをわかっているの ろうか。同氏はつい最近の講演で、来年には現在のチャットGPTは「古くさい親類」のように思える ろうと話した。

 が、そうなる可能性は低そう 。オープンAIの新たな暫定CEOとなったエメット・シアー氏は、「取 役会は安全性に関する特定の意見の違いを理由にサ を解任したのではない」とXに投稿した。

シアー氏は、何が起こったのか調査するとしている。

オープンAIの最大の出資者マイクロソフトは、アルトマン氏がこの技術を他所に持ち出すのを防ぐことにした。シアトルに本 を置く巨大ハイテク企業のマイクロソフトは、アルトマン氏が入社し、これから創設するAI 究チー を率いると発表した。ブロックマン氏も一緒に入社し、オープンAI社員のXへの投稿から判断すると、同社の優秀な人材も何人か連れて行くことになりそう 。

多くのオープンAI社員が、Xで同じ投稿をシェアしている。「人なくしてオープンAIなし」というもの 。

これはシアー氏へ、人を採用する必要がある ろうと告げる警告 ろうか。サンフランシスコのオープンAI本社前にいるの同僚によると、現地20日午前9時半(日本時間21日午前2時半)時点では、出社する人の気配はなかったという。

それとも、世界を再構築するテクノロジーをめぐる物語ではあるものの、結局は非常に人間くさいドラマ と思い起こさせるものなの ろうか。